「住宅ローンのリスクヘッジ計算式」 ~不測の事態に備える方法~
マイホームを購入した後に、「住みたくなくなった」「親と同居することになった」「転勤」「リストラ」「減給」など、いわゆる「不測の事態」が起きてしまったとき、マイホームを処分する方法は、最終的に2つの選択枝しかありません。それは「売る」か、それとも「貸す」かです。ところが実は、将来「売る」ことを考えて、X年後の売却価格(資産価格)を想定するのはプロでも困難なのです。
そこでお勧めしたいのが、「貸す」ことを考えたリスクヘッジの方法です。住宅の賃料は、売却価格(資産価格)に比べると硬直性が高い(状況の変化による変動が少ない)ので、ある程度の想定が可能なのです。
いざというときには
マイホームを人に貸して“賃料”を受け取ることで住宅ローンや各種費用をまかなっていくわけです。その具体的なやり方、計算式をお知らせします。とってもかんたんですよ。
1.賃料の想定
不測の事態が生じて、人に貸す場合、いくらで貸せるのか。
ここではまず「想定賃料」を出してみます。
(1)賃貸情報から賃料を推測する
インターネットの賃貸情報や住宅情報誌などで、「同じ駅」「同様の築年数・間取り」の賃貸情報を多く集めます。ここでのポイントは「サンプルはできるだけ多いほうがよい」ということ。誤差が小さくなるからです。
同じ駅のみでは情報数が少ない場合などは、お隣の駅で、やはり同様の条件で情報収集してみましょう。これら情報から推測できる賃料を、下表のAに記載します。
(2)不動産業者から賃料を推測する
「地元(地域密着型)の不動産業者」「広いネットワークを持った大手」の2種の不動産業者に、「いくらくらいで貸せるでしょうか」と、率直に賃料を訪ねてみましょう。このヒアリングから推測できる賃料を下表のBに記載します。
(3)推測賃料を算出する
上記の方法で推測した賃料を足した上で、
0.475をかけて下さい。
計算式にすると、“(A+B)×0.475=”となります。
この計算式の意味は
「2つの数字を足して」
「2で割って(平均を出して)」
「5%割り引く(95%がけにする)」
ということです。
「5%割り引く」の意味は、実は賃料というのはあくまでも「貸主側のオファー賃料」であり、そのままの数字で貸し出されるということはほとんどないからです。割り引き率は物件や地域によって調整が必要ですが、ここでは5%と仮定しています。
A.賃貸情報から推測した賃料 円
B.不動産業者から推測した賃料 円
(A+B)×0.475= 円
2.コストを算出する
マイホームを人に貸している間には、様々なコストがかかります。
このコストを割り出してみましょう。下表にコストをどんどん入れていきます。
(C)住宅ローン
ボーナス払いを併用している場合は、月々均等にならした数字を。
変動金利や短期固定金利を利用している場合は、金利が上昇することを想定した数字を下表に入れてください。ちなみに現在、一般的な金融機関は、皆さんにお金を貸すときに「金利が4%でもお金を返せるか」で判断していますので、私たちもとりあえず4%程度で想定しておきましょう。
(D)管理費 (E)修繕積立金
これはマンションの場合です。毎月の「管理費」「修繕積立金」の額を記載してください。ところで「修繕積立金」は、5年後や10年後にUPする計画になっていたり、10年後に一時金が発生する計画になっていることがあります。マンションの「長期修繕計画」を確認のうえ、それらを勘案した数字を入れましょう。
※一戸建ての場合
一戸建ては「管理費」はかかりませんが、建物の点検・メンテナンスの費用は必ずかかります。一般的にその費用は「建物価格の1%程度」を毎年積み立てているとよいでしょう。4LDK・30坪程度の大きさなら月額1万円程度は積み立てておきたいものです。よって一戸建ての場合には、下表D・Eの欄に1万円程度を見込んでおきましょう。
(F)固定資産税
毎年かかるコストですが、月あたりにならして(年額を12で割って)記載しましょう。注意したいのは、新築住宅を購入した場合には、「固定資産税の軽減措置がはたらいていること」です。マンションは6年目から、一戸建ては4年目から軽減措置が切れ、固定資産税がUPします。
C.住宅ローン 円
D.管理費 円
E.修繕積立金 円
F.固定資産税 円
合計(C+D+E+F) 円
※賃貸管理を業者に任せる場合
家賃の収集をはじめとする賃貸管理業務を業者に依頼する場合にはコストがかかります。料金は依頼の内容によって異なりますが、0.5万円程度見込んでおけばよいでしょう。
3.判定
「想定賃料」-「コスト」 プラス? or マイナス?
上記の作業で出た「想定賃料」から「コストの合計」を引いてください。
「プラスの場合」
人に貸した場合、お金を受け取ることになります。
「マイナスの場合」
不測の事態が生じたときに、マイホームを人に貸すと、マイナスになります(費用の持ち出しになります)。
この状況を改善する方法は大きく2つあります。
(1)頭金の額をもっと増やして(住宅ローンの額を減らして)毎月のローン額を減らす
(2)購入価格を下げて住宅ローンの額を減らし、毎月のローン額を減らす
ところで、ここで出た数字がマイナスになった場合でも、そのことそのものが悪いということではまったくありません。大切なのは、
「不測の事態が生じた際に、マイホームを人に貸した場合には、このようなことになるのだな」
ということを、把握しておくということです。
最後に。
プロがこのような想定を実際に行う場合には、賃料の下落率(上昇率)を織り込むことで、一定程度の「時間軸の視点」を採り入れます。賃料は、一般的には経年と共に数%ずつ下落していきます。下落率は地域特性や物件種別を勘案して決定します。また、X年後の住宅ローン残高を勘案しながら最適な住宅ローン商品の選択や設定方法を検討するのです。
※プロが行う資金計画のリスクヘッジはこちらをご参照ください。
http://www.sakurajimusyo.com/expert/money.html

長嶋 修(ながしま おさむ)
・株式会社さくら事務所 取締役会長
・さくら不動産アカデミー校長
・経済産業省 住宅産業関連ニュービジネス支援策検討委員会委員
不動産デベロッパー支店長として、幅広く不動産売買業務全般に携わる中で、業界の不透明な慣行、販売手法や哲学に疑問を感じるように。
一般ユーザーにとって、“本当に安心できる不動産取引・不動産業界が真にあるべき姿”を模索するうち、“購入者のみの立場に立つ不動産のプロフェッショナル”が必要であると確信、起業。1999年、不動産調査 さくら事務所(現 株式会社さくら事務所)設立。
以降、様々な活動を通じて“購入者のみの立場に立つ、完全独立系不動産コンサルタント”としての地位を築く。
マイホーム購入・不動産投資の第一人者として、著書、マスコミ掲載・出演、セミナー・講演等実績多数。
・国土交通大臣認定 不動産コンサルティング技能登録 (1)23626号
・宅地建物取引主任者
不動産の達人 株式会社さくら事務所
http://www.sakurajimusyo.com/
すまひとプロジェクト(NPO法人設立申請予定)主宰。
『すまひとらいぶらり』
http://www.sumahito.com/
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