野菜の値段について考えてみよう
いよいよ、食品の価格上昇傾向が顕著になってきました。
主な原因は、小麦・とうもろこし・石油などの高騰の影響です。値上げの対象品目はパンや麺類、ハム・ソーセージ、カレールーや加工食品など多岐にわたります。
世界的な食糧事情などを踏まえると、今後も食品の価格は徐々に上昇していくと考えられます。しかし、これまでの数年間、日本はデフレ経済下で多くの商品の価格は下落傾向でした。
ではちょっと視点を変えて、野菜の値段はどうでしょうか?最近、スーパーの店頭で買い物をすると、その値段の安さに驚くことがあります。
たとえば、大根が1本100~150円前後で売られていたりすると、「この大根はどんな作り方をされたんだろう?」と不安に感じますし、「生産者の生活は大丈夫だろうか?」と心配になったりします。
野菜や果物の一般的な流通経路を見てみましょう。私たち消費者の手許に届くまでには、なんと5段階を通っています。(大手スーパーなどは卸を介しない場合もあります)
それぞれの流通段階では、販売手数料が差し引かれます。たとえば、各流通の取り分がそれぞれ20%ずつと仮定してみます。1本150円の大根の場合だと関係者の取り分は、生産者=30円、JA=30円、青果市場=30円、卸=30円、小売=30円、となります。
生産者が受け取る代金は1本当たり30円ですので、大根を1000本栽培した場合の売上金は3万円ということになります。そしてそこからさらに、種代・肥料・農薬・除草剤・梱包資材・水・人件費(種まき・手入れ・農薬散布・収穫・ブラシ洗浄・葉落とし作業・箱詰め作業・農協への納品運搬など)などの諸経費を差し引くと、場合によっては、商品を出荷すればするほど赤字が増えるというケースも少なくないのです。 (※ 実際に生産者に入る代金は20%よりも、もっと少ないという説もあります)
大根を植えてから収穫するまでに約3ヶ月かかります。この売上代金でゆとりある生活は期待できそうにありません。どの作物もこれぐらいの手取りしかないとすると、いかにローコストで大量に生産するかということが最大の課題になってしまいます。手間のかかる有機肥料や堆肥ではなく、手軽で安価な化学肥料を使い、除草剤をしっかり撒き、殺虫剤や殺菌剤をたくさん使いたくなるのが人情でしょう。農家も生活がかかっているので、コストおよび労力削減のため、安全性や味や栄養価は二の次にならざるを得ないのです。
デフレ傾向で物価が下がると、モノが買いやすくなることは確かです。けれど一方で“何か大切なもの”が犠牲になっているのかも知れません。犠牲になるのは大抵外から見えにくい部分です。私が見てきた中では、多くの場合、『安全性』と『生産者の暮らし』でした。
これは決して生産者だけの問題ではありません。あまりに値段の安さを追求しすぎると、最後にはツケが回ってきます。消費者だけが幸せになり、生産者は困窮している・・・というのでは、すぐに破綻してしまうでしょう。“安くて、きれいで、手軽で、安全で、美味しいもの”などあり得ないのだと思って、生産者が額に汗して作ってくれた作物や食べものを、それなりの対価を支払ってありがたくいただく、そんな時代がやってきたのかも知れませんね。

【村長プロフィール】 木本直實(きもと・なおみ)
1964年 神戸生まれ。関西大学卒業後、サントリー株式会社で13年間勤務。2000年 大分県内に移住し、極限環境微生物を使った環境コンサルタントに転身。
2004年 農業生産者たちとのネットワークを活かし、ネットショップ『じんわり村』設立。
2006年 SBIホールディングス(株)『生活ガイド.com』にて「食と健康」コラム連載開始。 こだわり食材専門の業務用販売を開始。湯布院の一流旅館や料亭と取引開始。
2007年 無農薬・有機野菜の栽培開始。(契約農家に栽培方法を指導)農業資材販売開始。(財)大分県産業創造機構刊『創造おおいた』にて「じんわり村から」コラム連載中。
【じんわり村】 http://jinwari.jp/
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL http://www.seikatsu-guide.com/mt/mt-tb.cgi/227
- オリーブオイルの魅力
2007年12月20日 - 「有機栽培」と「無農薬栽培」の違いがわかりますか?
2007年11月20日 - 野菜の値段について考えてみよう
2007年10月19日 - 賞味期限と消費期限。
2007年09月20日 - 土づくりと無農薬農業
2007年08月20日 - トマトと高温障害
2007年07月20日 - 『ハーブティーを飲んでみませんか。』
2007年06月20日 - 『健康食品』ってなんだろう?
2007年05月18日 - 「私の目標は日本の食料自給率“120%” です。」
2007年04月20日 - 安心安全な生産者を育てるのは消費者です。
2007年03月20日 - みかんの木。
2007年02月19日 - いちごの“旬”はいつ?
2007年01月19日 - 納豆はすごい
2006年12月20日 - 実りの秋はしいたけから。
2006年11月20日 - 食の基本は、お米です。
2006年10月20日 - 食品添加物はいやですか?
2006年09月20日 - 牧場と乳製品
2006年08月20日 - 農薬が地球環境、消費者、生産者に与える悪影響について
2006年07月20日


