食と健康

食の生産現場に焦点を当てながら、食育に役立つ情報を提供します。

牧場と乳製品

2006.8.20

昨年頃から、北海道の牛乳が供給過剰になり大量に廃棄処分されることになったというニュースをご覧になった方も多いと思います。北海道だけでなく、九州などでも同じことが起きており、酪農関係者を悩ませています。

では、どうして牛乳が生産過剰になったのでしょうか?
数年前にある牧場経営者から聞いた話によると「昔は乳牛1頭当たり1日に18リットル程度出ればよかったのが、今は1日50リットルが目標値になっている」だといいます。

牧場経営の採算ラインに合わせて、日本の乳牛は昔の3倍近い乳量を期待されているわけです。
もともと、牛は牧草を食んでのんびりゆったり過ごして乳を出す動物ですが、1頭当たりの生産量を増やすためには、牧草だけでなく、より栄養価の高いとうもろこしなどの穀類をエサとして食べさせます。


チーズ小屋で『山のチーズ』を
つくる浦田健治郎さん
以前は1日2回だった搾乳回数が、生産量を増やす努力の過程で1日3回となり、それが習慣化すると、生理上、人間の都合で急に1日2回に減らすことはできなくなります。工業製品と違い、一度増えた生産量を減らすことは容易ではないのです。 乳が余ったら、加工することによりある程度保存できるようになりますが、加工場の許容量を超えてしまうと廃棄物として処理するしかありません。 廃棄物処理をするということは、単に牛乳がもったいないというだけでは納まりません。エネルギーやコストを使って作りだしたものを、今度はエネルギーやコストを使ってなかったことにするわけですから、食糧資源の損失でもありますし、環境に余分な負荷がかかることにもなります。 同時に、生産者にとっては、生産量が減り収入が減るのにエサ代は同じようにかかるので、エサ代などの負担が経営を圧迫します。そして、環境負荷がかかると、最終的には消費者が、もっと言えば、牛乳を飲まない人も含めた「地球上の人類」全体がツケを払わされることになるのです。
これまで経済発展を追求する中で、大量生産・大量消費を追及し、より安く・より便利に快適に、暮らしを豊かにすることを目指してきた私たちですが、本当に豊かな暮らしとはどういうものなのか、一度じっくり考え直してみてはどうでしょうか。 牛乳は牛からのいただきもの。できるだけ牛に無理をさせないで、自然に近い条件下で絞った乳を、ありがたくいただく。牛を慈しみ育てて乳を供給してくれる生産者にも感謝して、労働に見合う対価を支払うことを基本にすれば、無理に高栄養なエサを食べさせる必要もなくなっていくはずです。 少子高齢化で人口が減っていく中、牛乳の消費が今後大幅に拡大することはないでしょう。それならば、健康な牛が出す良質な乳を、必要な分量だけ供給できるしくみを作っていけないのだろうか、その思いを私たち消費者が購買活動の中で表現していけば、生産~加工~流通の流れが変わり始めるかも知れません。

村長のひとりごと
牧場経営の脅威として、乳房炎という乳牛の乳房の病気があります。乳房炎の牛は乳の量が減るだけでなく、味もよくありません。乳房炎の原因は細菌とされていますが、最近の研究では、化学肥料などを大量に施肥された土地で栽培された牧草などに含まれるカリウムがカルシウム・マグネシウムの吸収を阻害するからではないか、とか、ビタミンAの不足が原因ではないか、といったことが解明されつつあります。

結局のところ、人間の都合で牛の健康を損ねた結果だと私は思います。健康な牛の乳が飲みたいですね。

▼ 由布院うらけん牧場の浦田さんを招いて『食のセミナー』開催
http://jinwari.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=16&cid=10
▼ 牛を牛らしく育てることで生産調整を【地球生物会議】
http://www.alive-net.net/chikusan/apeal/haiki0603.html
▼ 牛乳は低温殺菌のものを
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hokkaido/shoku/gyunyu/news/20060801hog00m100001000c.html



2006年8月22日
じんわり村 村長 きもとなおみ

木本直實(きもと・なおみ)

木本直實(きもと・なおみ)

大手洋酒ビールメーカーに13年勤務。
その間、結婚→阪神大震災→出産→離婚を経験。
2000年、神戸から大分県内にある半農半漁の町に移住。
農家や食品の生産者との交流がはじまる。
2003年、「安全で美味しい食べ物」をテーマにブログを書き始める。
2005年、自然派食品ネットショップ『じんわり村』開設。
日々雑感を「じんわり起業きらくに日記」にて発信中。
趣味は読書(濫読)と株式投資。

原料と作りかたにこだわった安心で美味しい自然派食品
じんわり村 : http://www.jinwari.jp/
じんわり起業きらくに日記 : http://kirakuni.bakeinu.jp/

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